覚醒者と呼ばれる者達がいた。

人数は未数、他の人間は一般人。

そんな世界で、覚醒者達は闇に生きていた。

彼らも表の顔は何ら変わらない一般人。

これより、物語が幕が上がる。少年少女の手によって―――――。









      壱話  〜 合縁奇縁 〜
 








パタン・・・。


??「ふぁ・・・・・・」


欠伸をしつつ本を閉じる。次いで背伸び。

彼の名は水城梗哉みずきこうや

人との関わりを極端に拒む少年である。その様は無関係を装うそれに類似する。


彼は風見学園の図書室に居た。図書室には自分以外に二、三人と言った所である。
風見学園とは初音島と言われる三日月型の島にある、風見町に存在する学園。
初音島は何時の頃からか、桜が毎日咲き誇っていた。



さて、此処で少年の容姿を一つ。

背はあまり高くなく160cm。体重は48kg。顔は幼さが見え、どっちつかず。
と言っても整っているので結構美形。
髪は長めで肩に届く。華奢な体格をしており、女の子っぽい。

と言う少年だ。


そろそろ昼休みが終わる。

何であんな本を読んだのか甚だ疑問だが、さっさと思考を止めて教室に向かった。





授業中、先生の質問に適当に答えて、適当に黒板に書かれている事をノートを取る。
それを繰り返して、時は放課後に至った。
教室に残っている生徒は疎らで、少年は窓の外を眺めている。


帰ろうかな、と席を立つ。
流石に十二月の頭ともなれば、少し肌寒い。黒のコートを羽織って教室を出る。


??「お、水城。今帰りか?」


梗哉の数少ない友人の一人、朝倉純一が話し掛けて来た。
薄い茶色がかかった髪の毛で、格好良い部類に入る男子。それが彼だ。
背は175と高い。


梗哉「まぁね」
純一「そうか。じゃあ、一緒に帰らねぇか?杉並から逃げなきゃならない」


苦笑しながら話す純一。
杉並と言うのは、純一を同士と呼び、悪事を働く奴。
黙っていれば美形で成績優秀、運動神経抜群の男子である。


梗哉「別に良いけど。朝倉さんは良いの?」
純一「良いんだよ。アイツは風紀委員で大忙しらしいからな」
梗哉「ふーん」


何だ、残念。と呟くと、純一が怪訝な顔をして梗哉を見る。そこで微笑。
見る人が見れば嘲笑。


梗哉「一人で帰れると思ったのに」


薄く笑いながら純一に言ってやる。純一は何かを呟いてから、かったりぃ、と更に呟いた。
梗哉は薄い笑いを直し、何時もの気だるい感じの表情で純一と肩を並べた。



帰り道、二人で歩いている所、二人の女の子が遠巻きから自分達を呼ぶ声に気付いた。


??「朝倉せんぱーい!水城せんぱーい!」


一人は元気な声で。


???「朝倉君、水城君、待ってくださいよ〜」


一人はやや控えめな声で。
純一はその場で立ち止まり、梗哉はそのまま歩き続ける。
それを見た純一が梗哉の服の裾を掴み、強引に歩みを止まらせた。
梗哉は厭そうな顔をしながらも、立ち止まる。因みに服の裾は掴まれたまま。
仕方なく振り返ると、其処にはオレンジ色の髪の毛、天枷美春。
赤色のロング、白河ことりが駆けて来ているのが見えた。


純一「おっ、美春にことりか」
美春「そうですよ、先輩」
ことり「こんにちは、お二人とも。今帰りですか?」
純一「ああ、まぁな」


部活にも入ってないし、と純一が鞄を肩に乗せる。梗哉も言わずとがなである。
この二人もまた、梗哉の友人、と言うより知り合いだった。
白河ことりは学園のアイドル。天枷美春は元気一杯の女の子だ。


梗哉「純一。何で裾を掴んだままで居るんだ?」


疑問を訊いてみる。純一は含み笑いで梗哉に言った。


純一「お前、裾を離したら、間違いなく先に帰るだろうが」
ことり「そうですね。水城君は本当に何時も何処に居るか判りませんし」
美春「そうですよね。水城先輩、友達少ないですし」
梗哉「・・・・・・はぁ」


よくお判りで。溜息を吐き、鞄を担ぎ直す。
梗哉に友達は少ない。何度も言う様に、彼は人との関り合いを拒む。
それでも純一達のしつこさには負けたが。だが、それは一層彼の壁を厚くした。


純一「で、美春とことりも帰りなのか?」
美春「はいっ。本当は音夢先輩と一緒に仕事をしたかったんですけど・・・」
ことり「違う班の人だもんね」
純一「そうなのか?美春ならどんな手でも使って入りそうなんだが」


色々と三人が話している。純一も積極的に話している。
しかし。裾は離さない。取り敢えず、三人が話しに夢中になっている所で帰りたかったのだが、それは叶わない事だった。
何度も離そうとするが、離れない。つまり、このしつこさに梗哉は負けたのだ。


純一「―――――じゃ、行くぞ梗哉」
梗哉「は?何処に行く訳?」
純一「流石、梗哉。人の話訊かないな。どうせ、お前に選択肢など無い!!」
美春「れっつごーです!!」
ことり「おー!!」


何が、れっつごーだ。本当、この三人はしつこい。
尤も、しつこい奴等は他にも居るのだが。
体重が軽いので、普通に引き摺られて行く。
溜息を吐いて、彼は散っている桜に目をやった。次いで、睨み付けると、


ゴウッ!!


燃えた。
眼をぱちくり、と見開くがまぁ、良いかと興味が無い様に、純一に引き摺られていった。




「まさか、あんな子供が・・・・・・」


一人の"人間らしき者"が喋っている。
彼は梗哉が引き摺られて行く方向を見て、憎々しげに呟いた。


「報告せねば、な」


そうして、その"人間らしき者"は消え去った。
後には桜の吹雪。神秘的な雰囲気が漂った。




引き摺られて十分。何で、此処まで力があるのだろう、と考えるが直ぐに止める。
で、連れて来られたのは"花より団子"。所謂、喫茶店みたいな所だ。
桜を見ながら外でお茶が出来るのだが、今は十二月。
流石にそのサービスはやっていない。


ことり「やった。空いてますね」
美春「バナナパフェ〜〜〜」
純一「そのバナナ狂、辞める気は?」
美春「有る訳ありません!!」


ぎゃあぎゃあと五月蝿い。そんな事より、さっさと裾を離せ、馬鹿野郎。
心の中で毒づき、溜息を吐く。邪魔臭い。確かに此処の団子は美味い。
それがどうかしたのか。別に入りたい訳でもない。


純一「それじゃあ、入るか」
ことり「はい」
美春「行きましょう!!」
梗哉「・・・・・・帰りたい」


梗哉の呟き等無視して、純一達は中に入って行く。勿論裾は持ったまま。
ウェイトレスさんが案内してくれる間、女性と言う女性の殆どが見てくるが、余り気の良い物ではない。
席に着くと、やっと純一が裾を離した。


純一「此処まで来たら流石に―――――って!!」
ことり「速っ!!」
美春「水城先輩!?」


梗哉は既に外に出掛かっている。それを純一が一気に捕まえる。
ちっ、と舌打ちをして、素直に席に戻る。
只、席を窓際にされた。残念。これで外には出られない。


純一「本気でビックリしたぞ、今のは」
ことり「瞬間移動でも使えるんですか、水城君は」
美春「バナナ〜〜〜♪」


まぁ、良いだろう。要はさっさと食べれば帰れるんだから。
純一達と同じ物を頼み、来るのを待つ。その間にも話は絶えず。
そして、何時もの事ながら梗哉は参加していない。


純一「梗哉、お前クリスマス会参加しないのか?」
梗哉「うん。勿論」


にっこり笑って即答。その笑いで、此方を見ていた女性が落ちた。
梗哉はその事に勿論気付いていない。
純一も少しばかり頬が赤く、ことりと美春に関しては盛大に頬が赤い。
頭を振り、気を取り直してから純一が再度尋ねてくる。


純一「そうか。ったくお前、もうちょっと物事に関心を持った方が良いぞ?」
梗哉「良いじゃないか。純一の意地悪・・・・・・」
純一「うっ!!」


意地悪、と言う時に少し眼を潤ますのがポイント。大抵これでどうにかなる。
現に純一は頭を抱えて、『そんなつもりじゃ・・・・・・』とぶつぶつ言ってるし、ことりも美春も俯きながら頬を紅くしている。


梗哉「クスクスクス」


小悪魔的な笑いを零しながら、ウェイトレスさんの持ってきた団子を受け取る。
皆の分を置き、ウェイトレスが厨房に戻って行く。
撃沈している三人の事は放っておいて、一人団子を食す。


純一「くそ、また騙された・・・・・・」
ことり「卑怯っす、水城君」
美春「バナナ〜〜〜♪」


三人が―――――訂正、二人が恨みがましく睨みながら団子を口に運んでいく。
梗哉はそんな事御構い無しに、窓の外を見ている。
今日も、空が青く、何処までも続いていた―――――。