Cyanpasu 〜放課後ハイスクール〜
オレンジ色に輝く教室に男子学生と女子学生がいた。
男子学生はニコニコの笑顔、女子学生はガチガチに緊張していた。
「話って何?」
ニコニコ笑顔の男子学生が、大きなカバンの中に荷物を入れながら聞いた。
「こ、ここから・・・いなくなっちゃうんですね。」
「卒業って言ってほしいな。」
男子学生は苦笑いしながら言った。
「せ、先輩は卒業した後、どうするんですか?」
女子学生は、がんばって緊張をとこうとしているようだ。
「あれ、言ってなかったっけ?」
男子学生は、もう言ってあるものだと思っていたようだ。
「聞いてませんよ!」
女子学生は顔に怒気を含んで、それでも笑顔で男子学生の顔を見る。
「ご、ごめんなさい。ボクは2年制の専門学校に行くんだよ。」
答えが聞けると女子学生は、いつもと変わらない笑顔で接してくれた。
そのことに、男子学生は安堵のため息をする。
「そうだったんですか。場所はどこなんですか?」
女子学生は、そう言いながら運動場を一望できる窓側に近づいていった。
当然のことながら、運動場には誰もいなかった。
今日は卒業式で午前中に学校は終わっていたからだ。
「僕の行く場所は、この町の隣にある『とみおか』って所だよ。」
「えっ、そこって私の住んでいる町ですよ?」
女子学生は、半分驚き・半分喜びという顔をこちらに向けてきた。
「だから、その学校にしたんだよ。」
「えっ!?」
男子学生の小さな呟きに女子学生は敏感に反応した。
「な、なんでもない!!それより、ボクその町で一人暮らしする予定なんだ。分からない事があったら頼っていいかな?」
男子学生は、大きなカバンに荷物を詰め込みながら言った。
どうやら、まだまだ荷物はあるようだ。
「よ、よろこんで!」
女子学生は大きく首を縦に振った。
なんかもう、悔しいくらいに幸せな顔をしていた。
「さてと、荷物も片付いたことだし、ボクはそろそろ帰るね。」
そういって、何とか収まったギュウギュウ詰めのカバンを重そうにもって教室の出口に向かって歩き出した。
「あ、あの!」
「ん?」
男子学生は扉に手をかけながら、首だけを後ろに向けて女子学生を見た。
「こ・・・これ、私の携帯番号です。好きなときにかけてきてください。」
女子学生は、ポケットの中に用意していた紙切れを男子学生に手渡した。
「毎日かけちゃうかもよ?」
「別にかまいませんよ?」
女子学生の顔は、教室のオレンジ色より晴れ晴れと輝いていた。